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2019年1月28日月曜日

建物買取請求権の行使の方法



(1)借地契約の存続期間の満了時において,


借地権者(借地人)は借地契約の更新を望まないが,


借地権設定者(地主)は借地契約の更新を望む場合,


借地法第4条第2項・借地借家法第13条第1項に基づいて,借地権者は借地上の建物の買取請求権を行使することができるのかという問題があります。


私見は,否定説です。


(2)否定説は,以下のとおりです。


我妻 榮 『民法講義V2』
「貸主が更新に應じない場合に限る。」


星野 英一 『借地・借家法』
「地主が更新を望んでいる場合には借地人には買取請求権がないのはいうまでもない。」


馬場 俊一 『問答式 借地・借家の実務1』
「地主が更新を望んでいるのに借地人より任意に終了する場合には,借地人は買取請求権を行使できません。」


山本 豊 『コンメンタール借地借家法(第2版)』
「借地権設定者は更新を認める意思を表示して買取りを免れることができる。」




(3)肯定説は,以下のとおりです。


高島 良一 『借地の法律実務(第3版)』
「建物買取請求権を認めた借地借家法などの条文をみますと,(略),借地人の更新の請求に対する地主の異議があって,契約が更新されないときに,買取請求ができるとなっています。これを文字どおり解釈しますと,買取請求は,借地人の更新の請求が前提となり,本問のように,借地人であるあなたの方から「更新の請求をしないで借地権を消滅させる場合」には,地主が承諾しなければ,建物を買い取らせることはできないといえそうです。(略)
 本問のように,故郷に帰るため借地を必要としなくなるので,建物を売り,これを資金として新しい生活を始める場合には,建物をそのままにしておいて,借地人に資金を回収するみちを開いておく必要があります。
 このように考えますと,借地人が更新を請求しないで,借地契約を終了させる場合にも,買取請求をすることができると解釈するのが適当と考えます。」


(4)借地契約の更新を希望している場合の借地権設定者にすれば,建物買取請求権を行使が認められますと,突然に買取のための現金を用意する必要が生じますので,この点からも否定説の方が適切だと思われます。




ところで,借地法第10条・借地借家法第14条には,借地権者は第三者に借地上の建物及び借地権を譲渡し,その譲渡について借地権設定者が承諾しない場合には,第三者は建物買取請求権を行使することができると規定されています。


当然ながら,この場合において,借地権設定者が借地権の譲渡を承諾すれば,第三者は建物買取請求権を行使することができません。


否定説によりますと,借地権設定者が借地契約の更新(継続)を望む方針の場合には,もともとの借地権者のときでも,借地権を譲り受けた第三者のときでも,借地権設定者は建物買取請求権を行使されない地位が保障されているということで一貫していることになります。


借地権者は建物買取請求権を行使できないとしても,第三者に建物付きの借地権を売却することにより,投下資本を回収する方法がありますので,否定説によって,とくに借地権者に不利益が生じるとはいえません。


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事務所 札幌市中央区
(石原拓郎司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所)のHP
 

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