Aさんは,自営業者Bさんに100万円を貸しました。
しかし,Bさんは,約束の期限に返しませんでした。
Bさんは,借りるときに,自宅兼工場の不動産を所有しているから大丈夫といっていました。
しかし,Bさんの不動産の登記事項証明書(不動産登記簿)を見ると,
事業用資金の担保として順位1番で甲銀行の根抵当権(極度額3000万円),
順位2番で貸金業者乙の根抵当権仮登記(極度額300万円)が設定されていました。
市税滞納のため,順位3番で市から差押え登記もされていました。
*不動産業者に尋ねたところ,不動産の時価は,2000万円ほどです。
Aさんは督促のために,Bさんの自宅兼工場に行きましたが,
すでに,営業はしていないようです。
上記のような場合,おそらく,Aさんは,貸金を回収できません。
なぜなら,自宅兼工場の不動産には,余剰価値がないと考えられるからです。
(具体的事件において,余剰価値が出ていることもあり得ますが)
不動産の競落代金は,先順位の銀行が,全部持って行ってしまうからです。
このように,不動産を所有していても,その不動産が担保に取られていると,
不動産の時価-担保の債権額=不動産の価値
になります。
「担保割れ」,といって,不動産価値がマイナスになっていることもあります(地価の下落などで)。
サラリーマンなら,給料の差押えという方法が可能ですが,
自営業者の場合,それもできません。
自営業者の場合は,めぼしい財産は事業資金の担保になっているので,
お金を貸すときは,熟慮しましょう。
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