共有(共同所有)している不動産を賃貸している場合の賃料債権ですが,
賃貸借契約で特約をしていない限り,
賃貸人である各共有者は,その持分に応じた賃料債権額を賃借人に対して,各自請求することができます。
賃料債権は分割債権と解されているからです(最判平17年9月8日民集59巻7号1931頁,川井健・新版注釈民法(7),奥田昌道・債権総論(下),裁判所職員総合研修所監修・執行文講義案(改訂補訂版))。
賃貸人である各共有者が,賃料債権の全額を請求できるという不可分債権説(同旨の裁判例:東京地判昭45年7月16日下民集21巻7号1062頁,大阪高判平元8月29日判タ709号208頁など,なお小野秀誠・債権総論は上記最判平17年に言及しつつも不可分債権と解しています。松尾弘・私法判例リマークス2017年[上]は不可分債権であるとの見解が一般的であると解しています。)もありますが,
上記最判平17年が,「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであっ
て,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。」と判示したため,共有から生ずる賃料債権は分割債権と解されています。
ただし,東京地方裁判所民事執行センターにおける賃料債権に対する物上代位で,不可分債権とする取り扱いについては,東京地方裁判所民事執行センター実務研究会・民事執行の実務 債権執行編 上 [第3版」を参照。
なお,岡口基一・要件事実マニュアル第1巻(第3版)には,不可分債権の例として上記大阪高判平元8月29日が記載されていましたが,要件事実マニュアル第1巻(第5版)では削除されていました。
*内部関係(他の共有者との関係は,分割債権とする。)と外部関係(賃借人との関係では不可分債権とする。)を区別する考え方もあり得るところです。
賃借人としても,賃貸人である各共有者ごとに支払わなければならないことは煩雑で,仮に不可分債権でれば,ある共有者に賃料の全額支払うことができるようになります。
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札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
当事務所のHP http://ishihara-shihou-gyosei.com/
TEL:011-532-5970
ブログ記載時の法律に基づいています。具体的な事件については,必ず専門家にご相談ください。 司法書士・行政書士・社会保険労務士 石原拓郎
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2017年3月3日金曜日
2017年3月1日水曜日
賃貸人(家主・大家)が修繕・修理してくれない場合
当事務所では,札幌簡易裁判所のほか,岩見沢,夕張,滝川,室蘭,伊達,苫小牧,浦河,静内,小樽,岩内の各簡易裁判所における,
①賃貸トラブルの相談
②賃貸トラブルの内容証明郵便の作成
③賃貸トラブルの訴状・調停申立書・答弁書・準備書面の作成
③賃貸トラブルの訴訟代理(訴額が140万円以内に限る)
を承っております。
札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
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民法第606条第1項により,賃貸人(家主・大家)には使用及び収益に必要な修繕をする義務があります。
ただし,民法第606条第1項は任意規定とされており,特約で,賃貸人の修繕義務を免除することができるとされています。
修繕義務の範囲は,使用及び収益に必要な部分に限られますので,使用及び収益に支障がない程度の破損部分については,修繕義務がありません。
修繕義務は修繕可能であることが前提となっていますので,修繕することが物理的にも経済的にも不可能な場合は,修繕義務ありません。
賃貸人が,賃貸物件を修繕(修理)してくれない場合の賃借人(借り主)の対応ですが,
①賃貸物件所在地の簡易裁判所に民事調停(宅地建物調停)を申し立てる方法
簡易裁判所の調停委員が申立人(賃借人)と相手方(賃貸人)との間に入ってくれますので,調停(話し合い)が成立すれば,解決ということなります。
なお,調停は訴訟とは異なり,裁判所への出席義務がありませんので,相手方の欠席によって終了する可能性があります。
②賃借人が修繕費用を立て替えて,賃料と相殺する方法(民法第608条第1項)
賃借人(借り主)が,工事業者に修繕を依頼して,その修繕費用を立て替えた場合は,賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときに該当しますので,
賃借人は必要費償還請求権をもって賃料支払債務と相殺することができます。
ただし,立て替えた修繕費用が必要費に相応のものであること,つまり修繕範囲や単価が適正であることは,賃借人が証明しなければなりません。
なお,相殺の意思表示は,賃貸人の解除の意思表示よりも先にされている必要がありますので,賃料不払いによる賃貸人の解除の意思表示が先にされていた場合は,賃料債務との相殺をもってしても解除の効力を争うことはできません。
【最判昭和32年3月8日民集11巻3号513頁】
「賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。」
③損害賠償請求権と賃料債務とを相殺する方法
賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った損害賠償請求権と賃料債務を相殺することができます。
ただし,賃借人には条理によって,損害を回避又は減少させる措置を執る義務が生じる場合もあるとされており,すべての損害を賃貸人に請求できるとは限りません。
【最判平21年1月19日民集63巻1号97頁】
「店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない,とされた事例」
④賃料減額の意思表示をする方法(民法第611条第1項の類推適用)
賃貸物件の破損が賃借人の責任ではないことを前提として,
賃貸人の修繕義務の不履行により,賃貸物件の使用収益が全部不能の状態にある場合は,賃借人はその期間中の賃料を支払う必要がありません。
賃貸物件の使用収益が一部不能の状態にある場合は,賃借人は賃貸人に対して,その不能部分に対応した賃料部分の減額を請求することができます。
使用収益が全部不能でなければ,賃料の全部の支払いを免れることはできませんので,一部不能の場合は,使用収益の可能な部分に対応する賃料を支払う必要があります。
なお,賃借人の通知義務(民法第615条)の規定とも関係しますが,使用収益が不能となった時点については賃借人が証明する必要がありますので,修繕が必要になった場合は,賃借人は賃貸人に対して,すみやかに通知する必要があります。
【最判昭34年12月4日民集13巻12号1588頁】
「建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。」
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民法
(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
①賃貸トラブルの相談
②賃貸トラブルの内容証明郵便の作成
③賃貸トラブルの訴状・調停申立書・答弁書・準備書面の作成
③賃貸トラブルの訴訟代理(訴額が140万円以内に限る)
を承っております。
札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
当事務所のHP http://ishihara-shihou-gyosei.com/
TEL:011-532-5970
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民法第606条第1項により,賃貸人(家主・大家)には使用及び収益に必要な修繕をする義務があります。
ただし,民法第606条第1項は任意規定とされており,特約で,賃貸人の修繕義務を免除することができるとされています。
修繕義務の範囲は,使用及び収益に必要な部分に限られますので,使用及び収益に支障がない程度の破損部分については,修繕義務がありません。
修繕義務は修繕可能であることが前提となっていますので,修繕することが物理的にも経済的にも不可能な場合は,修繕義務ありません。
賃貸人が,賃貸物件を修繕(修理)してくれない場合の賃借人(借り主)の対応ですが,
①賃貸物件所在地の簡易裁判所に民事調停(宅地建物調停)を申し立てる方法
簡易裁判所の調停委員が申立人(賃借人)と相手方(賃貸人)との間に入ってくれますので,調停(話し合い)が成立すれば,解決ということなります。
なお,調停は訴訟とは異なり,裁判所への出席義務がありませんので,相手方の欠席によって終了する可能性があります。
②賃借人が修繕費用を立て替えて,賃料と相殺する方法(民法第608条第1項)
賃借人(借り主)が,工事業者に修繕を依頼して,その修繕費用を立て替えた場合は,賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときに該当しますので,
賃借人は必要費償還請求権をもって賃料支払債務と相殺することができます。
ただし,立て替えた修繕費用が必要費に相応のものであること,つまり修繕範囲や単価が適正であることは,賃借人が証明しなければなりません。
なお,相殺の意思表示は,賃貸人の解除の意思表示よりも先にされている必要がありますので,賃料不払いによる賃貸人の解除の意思表示が先にされていた場合は,賃料債務との相殺をもってしても解除の効力を争うことはできません。
【最判昭和32年3月8日民集11巻3号513頁】
「賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。」
③損害賠償請求権と賃料債務とを相殺する方法
賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った損害賠償請求権と賃料債務を相殺することができます。
ただし,賃借人には条理によって,損害を回避又は減少させる措置を執る義務が生じる場合もあるとされており,すべての損害を賃貸人に請求できるとは限りません。
【最判平21年1月19日民集63巻1号97頁】
「店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない,とされた事例」
④賃料減額の意思表示をする方法(民法第611条第1項の類推適用)
賃貸物件の破損が賃借人の責任ではないことを前提として,
賃貸人の修繕義務の不履行により,賃貸物件の使用収益が全部不能の状態にある場合は,賃借人はその期間中の賃料を支払う必要がありません。
賃貸物件の使用収益が一部不能の状態にある場合は,賃借人は賃貸人に対して,その不能部分に対応した賃料部分の減額を請求することができます。
使用収益が全部不能でなければ,賃料の全部の支払いを免れることはできませんので,一部不能の場合は,使用収益の可能な部分に対応する賃料を支払う必要があります。
なお,賃借人の通知義務(民法第615条)の規定とも関係しますが,使用収益が不能となった時点については賃借人が証明する必要がありますので,修繕が必要になった場合は,賃借人は賃貸人に対して,すみやかに通知する必要があります。
【最判昭34年12月4日民集13巻12号1588頁】
「建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。」
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民法
(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
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