①賃貸トラブルの相談
②賃貸トラブルの内容証明郵便の作成
③賃貸トラブルの訴状・調停申立書・答弁書・準備書面の作成
③賃貸トラブルの訴訟代理(訴額が140万円以内に限る)
を承っております。
札幌市中央区 石原拓郎 司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所
当事務所のHP http://ishihara-shihou-gyosei.com/
TEL:011-532-5970
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
民法第606条第1項により,賃貸人(家主・大家)には使用及び収益に必要な修繕をする義務があります。
ただし,民法第606条第1項は任意規定とされており,特約で,賃貸人の修繕義務を免除することができるとされています。
修繕義務の範囲は,使用及び収益に必要な部分に限られますので,使用及び収益に支障がない程度の破損部分については,修繕義務がありません。
修繕義務は修繕可能であることが前提となっていますので,修繕することが物理的にも経済的にも不可能な場合は,修繕義務ありません。
賃貸人が,賃貸物件を修繕(修理)してくれない場合の賃借人(借り主)の対応ですが,
①賃貸物件所在地の簡易裁判所に民事調停(宅地建物調停)を申し立てる方法
簡易裁判所の調停委員が申立人(賃借人)と相手方(賃貸人)との間に入ってくれますので,調停(話し合い)が成立すれば,解決ということなります。
なお,調停は訴訟とは異なり,裁判所への出席義務がありませんので,相手方の欠席によって終了する可能性があります。
②賃借人が修繕費用を立て替えて,賃料と相殺する方法(民法第608条第1項)
賃借人(借り主)が,工事業者に修繕を依頼して,その修繕費用を立て替えた場合は,賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときに該当しますので,
賃借人は必要費償還請求権をもって賃料支払債務と相殺することができます。
ただし,立て替えた修繕費用が必要費に相応のものであること,つまり修繕範囲や単価が適正であることは,賃借人が証明しなければなりません。
なお,相殺の意思表示は,賃貸人の解除の意思表示よりも先にされている必要がありますので,賃料不払いによる賃貸人の解除の意思表示が先にされていた場合は,賃料債務との相殺をもってしても解除の効力を争うことはできません。
【最判昭和32年3月8日民集11巻3号513頁】
「賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。」
③損害賠償請求権と賃料債務とを相殺する方法
賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った損害賠償請求権と賃料債務を相殺することができます。
ただし,賃借人には条理によって,損害を回避又は減少させる措置を執る義務が生じる場合もあるとされており,すべての損害を賃貸人に請求できるとは限りません。
【最判平21年1月19日民集63巻1号97頁】
「店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない,とされた事例」
④賃料減額の意思表示をする方法(民法第611条第1項の類推適用)
賃貸物件の破損が賃借人の責任ではないことを前提として,
賃貸人の修繕義務の不履行により,賃貸物件の使用収益が全部不能の状態にある場合は,賃借人はその期間中の賃料を支払う必要がありません。
賃貸物件の使用収益が一部不能の状態にある場合は,賃借人は賃貸人に対して,その不能部分に対応した賃料部分の減額を請求することができます。
使用収益が全部不能でなければ,賃料の全部の支払いを免れることはできませんので,一部不能の場合は,使用収益の可能な部分に対応する賃料を支払う必要があります。
なお,賃借人の通知義務(民法第615条)の規定とも関係しますが,使用収益が不能となった時点については賃借人が証明する必要がありますので,修繕が必要になった場合は,賃借人は賃貸人に対して,すみやかに通知する必要があります。
【最判昭34年12月4日民集13巻12号1588頁】
「建物所有の目的で賃借した土地の地上建物が戦災により滅失した後、右土地は特別都市計画法による区画整理区域に指定されたが、換地予定地の指定が遅れ、その間原審認定のような事情があつて(原判決理由参照)、事実上これを家屋所有の目的で使用することに支障を来したとしても、賃借人の使用収益が全面的に不能であつたものとは認められないときは、賃借人は賃料の支払義務を当然に免れたものということはできない。」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
民法
(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。