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賃貸マンション・アパートの退去費用・原状回復(札幌)

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2012年9月21日金曜日

敷金返還請求の請求原因

賃借人をX,賃貸人をYとすると,

(1)建物賃貸借契約における敷金返還請求の請求原因は,

①XとYが,本件建物について賃貸借契約を締結したこと

②YがXに対し,①に契約に基づき本件建物を引し渡したこと

③XとYが敷金授受の合意をし,これに基づいてXがYに敷金を交付したこと

④本件賃貸借契約が終了したこと

⑤XがYに対し,賃貸借契約終了に基づき本件建物を返還したこと

⑥XがYに対し,②から④までの期間の賃料及び④から⑤までの期間の賃料相当損害金を支払ったこと


(2)原状回復費用の控除の抗弁事実は,

①本件建物の明渡し・退去時に,修繕・交換を必要とする限度の損耗・汚損した部分があること

②当該損耗・汚損が,Xの入居期間中に発生したこと

③当該損耗・汚損が,通常の使用により生ずる程度を越えること,
又は通常の使用により生じる損耗・汚損の修繕・交換費用についてXが負担するとの合意があること(原状回復特約)

④Yが,当該損耗・汚損した部分の修繕・交換のために費用を支出したこと


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2012年9月13日木曜日

借地借家法38条2項所定の書面に関する判例

最高裁判所は,
「借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,その契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要する。」
と判断し,賃貸人の定期建物賃貸借契約の終了に基づく明渡し請求を棄却しました。

(よって,定期建物賃貸借条項が無効になる結果,本件賃貸借契約は約定期間(5年間)の経過後は,期間の定めのない賃貸借契約になります。)

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 本件事案では,賃貸人は賃借人に対し,借地借家法38条2項所定の書面を交付していませんでしたが,契約締結前に定期建物賃貸借契約書の原案を送付しており,賃借人は原案の内容を検討していました。
 
 原審は,契約書の原案に定期建物賃貸借条項の記載があることから,原案を検討した賃借人は定期建物賃貸借契約との認識を有していたといえる。よって,借地借家法38条2項所定の書面の交付がなくても,定期建物賃貸借契約は成立していると判断しました。

 しかし,最高裁判所は,借地借家法38条2項の趣旨は,契約締結に先立ち,契約締結の意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争を未然に防止することにあるものと解される。

 契約締結に至る経緯,契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

 よって,借地借家法38条2項所定の書面は,賃貸借契約書とは,別個独立の書面であることを要すると判断しました。

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事件番号 平成22(受)1209

事件名 建物明渡請求事件

 裁判年月日 平成24年09月13日  最高裁判所第一小法廷 判決

結果 破棄自判 

 判示事項 

裁判要旨 

借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,その契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要する。

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(定期建物賃貸借)


第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。

2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

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最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82539&hanreiKbn=02


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2012年9月5日水曜日

数量指示売買に関する下級審判例

公簿面積どおりの実測面積がなかったとして、数量指示売買における担保責任を根拠に契約解除等を主張したが、棄却された事例

(東京地判 平24・4・18 ウエストロージャパン) 石原賢太郎


①土地売買契約書には、第2条で「売主及び買主は本物件の対象面積を標記面積(A)とし、実測面積との間に差異が生じても互いに異議を申し立てないとともに、売買代金増減の請求をしないものとする。」と記載されていたこと,

②特約条項で「本契約物件は現状有姿の公簿取引とする。」と記載されていること、重要事項説明書には「登記簿面積合計68.56㎡」と記載され、「実測面積合計」は空欄であったこと,

③測量をしないかわりに近隣相場より低価格で売買することにし、Xも相場より安いことを認識していたこと,

などを理由に,買主Xの請求を棄却しました。



不動産適正取引推進機構HP
http://www.retio.or.jp/info/pdf/86/86-086.pdf


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2012年9月4日火曜日

賃料債権の差押えと賃借人への賃借建物譲渡による賃貸借契約終了に関する判例

事件番号 平成22(受)1280

事件名 所有権移転登記抹消登記手続等,賃料債権取立請求事件

裁判年月日 平成24年09月04日  最高裁判所第三小法廷  判決

結果 その他 

 判示事項 

 裁判要旨 

賃料債権の差押えの効力発生後に賃貸借契約が終了した場合において,その後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることの可否

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賃貸人が賃借人に賃貸借契約の目的である
建物を譲渡したことにより賃貸借契約が終了した以上は,

その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても,

賃貸人と賃借人との人的関係,当該建物を譲渡するに至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして,

賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り,

差押債権者は,第三債務者である賃借人から,

当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができないというべきである。



  最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82521&hanreiKbn=02


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2012年9月3日月曜日

売買契約中に売主が死亡した場合の相続税の課税財産

土地等の売買契約中に売主に相続が開始した場合における相続税の課税財産は、相続開始後に相続人が当該売買契約を解除した場合であっても、売買残代金請求権とするのが相当であるとした事例

相続税の納税義務は、相続による財産を取得した時、すなわち、相続開始の時に成立するものと解される。

そして、相続により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とすることとされており、相続により取得した財産の価額は、原則として、当該財産の取得の時における時価によることとされていることから、相続開始後の当該財産に生じた事情は、制度の上の措置がなされている場合など、これを考慮すべき特段の事情と認められない限り考慮されないこととなる。

また、相続開始時に売買契約が締結されている土地等について、相続税の課税対象となる財産を判定するに当たっては、相続開始の時において、売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認められるか否かの観点から判定するのが相当と解される。

そうすると、このようにして判定した相続税の課税対象となる財産について、相続開始後に何らかの事情が生じたとしても、相続開始の時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情でない限り、その事情は考慮されるものではないと解される。


 本件売買契約の各当事者は、本件売買契約の実現に向け、本件売買契約書に定められた各条項を誠実に履行し、本件相続の開始時において、本件各土地建物の引渡予定日及び売買残代金の決済予定日の決定していたことが認められる。

このように、本件相続の開始時において、本件売買契約が履行されることが確実であると認められるような状況下にあっては、本件各土地建物の所有権が本件被相続人に残っているとしても、もはやその実質は本件売買契約に係る売買残代金請求権を確保するための機能を有するにすぎないものといえ、請求人らが相続した本件各土地建物は、独立して相続税の課税財産を構成しないというべきである。

そして、請求人らが本件相続の開始後に行った本件売買契約の解除は、本件被相続人から本件売買契約に係る契約上の地位を承継した請求人らの意思によるものであり、当該解除をもって、相続開始時において売買残代金請求権が確定的に被相続人に帰属していると認めることが不相当であるというべき特段の事情ということはできないから、本件相続の開始時において、売買残代金請求権は確定的に本件被相続人に帰属していると認めるのが相当である。

 そうすると、本件相続に係る相続税の課税財産とすべき財産は、本件売買契約に係る売買残代金請求権である。



平成21年9月16日裁決
裁決事例集 No.78 - 419頁


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2012年9月2日日曜日

最高裁平成24年4月6日第2小法廷判決

平成22年(受)第754号建物明渡請求事件

判決要旨

第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって建物が明け渡されている場合には,控訴審は,当該建物の明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や同請求に対する抗弁において主張されている敷金返還請求権の存否についても,当該明渡しの事実を考慮することなく,判断すべきである。

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(登記情報610号 90頁 の無署名解説から抜粋)

 仮執行による給付であっても実体法上の効果が生じるのであり,ただ当該効果は確定的なものではなくて解除条件付きであることから,控訴審は訴訟手続上その事実を考慮することができないというにすぎない。

 仮執行による本件建物の明渡しは,解除条件付とはいえ,その実体上の効果,すなわち履行遅滞の終了や不法占有の終了という効果を生じさせるものであり,これによって明渡後の賃料相当損害金等はもはや生じないことになる(が・・・)。

 仮執行宣言付きの第1審判決が確定した場合,所有者(賃貸人)は,この確定判決に基づく執行の際,本件建物の明渡しを重ねて求めることはできないのはもちろん,仮執行によって現実に明け渡された日より後の賃料相当損害金等についても,その執行を求めることができず,仮に執行を求めたとしても賃借人の請求異議等によって妨げられるものと解されるものである。


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