最高裁判所は,
「借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,その契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要する。」
と判断し,賃貸人の定期建物賃貸借契約の終了に基づく明渡し請求を棄却しました。
(よって,定期建物賃貸借条項が無効になる結果,本件賃貸借契約は約定期間(5年間)の経過後は,期間の定めのない賃貸借契約になります。)
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本件事案では,賃貸人は賃借人に対し,借地借家法38条2項所定の書面を交付していませんでしたが,契約締結前に定期建物賃貸借契約書の原案を送付しており,賃借人は原案の内容を検討していました。
原審は,契約書の原案に定期建物賃貸借条項の記載があることから,原案を検討した賃借人は定期建物賃貸借契約との認識を有していたといえる。よって,借地借家法38条2項所定の書面の交付がなくても,定期建物賃貸借契約は成立していると判断しました。
しかし,最高裁判所は,借地借家法38条2項の趣旨は,契約締結に先立ち,契約締結の意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争を未然に防止することにあるものと解される。
契約締結に至る経緯,契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく形式的,画一的に取り扱うのが相当である。
よって,借地借家法38条2項所定の書面は,賃貸借契約書とは,別個独立の書面であることを要すると判断しました。
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事件番号 平成22(受)1209
事件名 建物明渡請求事件
裁判年月日 平成24年09月13日 最高裁判所第一小法廷 判決
結果 破棄自判
判示事項
裁判要旨
借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,その契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要する。
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(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
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最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82539&hanreiKbn=02
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当事務所のHP http://ishihara-shihou-gyosei.com/