(1)賃貸人の修繕義務は,賃貸物件の損傷が不可抗力に基づく場合でも免れません。
①賃貸人の修繕義務の不履行により,使用収益が全部不能となる場合,
賃料債務の支払いを拒むことができます。
その期間に対応した賃料支払い債務は発生しません(大判大4年12月11日民録21・2058)。
②使用収益が一部不能となる場合,
賃貸人が修繕するまでの間,賃借人は同時履行の抗弁として,
賃料の一部の支払いを拒むことができ(大判大5年5月22日民録22・1011),
さらに民法611条1項の類推により賃料減額請求権を行使すれば賃料が減額されます。
(2)賃貸借契約に基づき賃借人には賃料支払い義務があります。
賃借人が賃料を支払い義務の全部または一部を履行しない場合は,
賃料を支払わない正当理由(使用収益の全部または一部不能)を証明できなければ,
賃貸人から賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除されますので注意して下さい。
(3)かりに,現時点で賃料を支払わない正当理由が証明できたとしても,
正当理由が生じた時期を証明できなければ,その期間の賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除される可能性があります。
(4)また,賃料の支払い義務が免除されるのは,賃借物の使用不能部分に応じた賃料部分に限定されます。
よって,賃貸人や不動産管理業者の対応が「気にくわなかった」からといって,
賃料全部の支払いを止めると,賃料滞納を理由に解除される可能性があります。
(5)なお,民法611条1項の類推による賃借物の一部滅失による賃料の減額請求と借地借家法32条の借賃増減請求とは異なりますので,当然,訴訟類型も異なることになります。
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