家賃保証会社の従業員による取立行為が不法行為に当たるとされた事例
本件は、賃借人が、家賃保証会社の従業員らによる更新保証委託手数料および立替家賃の取立行為は不法行為に当たると主張し、保証会社とその従業員らに対して損害賠償を求めた事例である。
裁判所は、従業員らの取立行為について、心身の安全や生活の平穏を脅かすようなものであったと評価したうえで、不法行為が成立するとし、賃借人の請求を一部認めた。(福岡地裁平成21年12月3日判決)
『消費者法ニュース』83号65ページ
理由
(1)一般論
債権の取立行為であっても、その態様が社会通念上是認される限度を超え、相手方の心身の安全や生活の平穏を脅かすようなものである場合には、不法行為が成立する。
(2)本件について
(a)事実認定
本件では、午後9時に訪問時間を指定したうえで、同時刻から翌日午前3時までの深夜長時間にわたって取立行為が継続され、その中で「この程度の荷物なら1回で搬出できる」旨の発言や、支払いがされなかった場合にはBの孫の小学校に行く旨の発言などの脅迫的言辞、荷物搬出の委任状および退去届の作成の要求、知人への金策や母親への土下座による金の無心の要求、Xの承諾なく携帯電話を閲覧したり、部屋に侵入して財布の中を見るなどの無承諾行為、車内に監禁状態に置いたうえでの強い口調による執拗(しつよう)な支払い要求、Bへの連帯保証の要求などがなされたものである。
そして、深夜約6時間もの長時間にわたってこれらの行為が継続されていることや、警察を呼ぶといった話が出たこと、これに加え、Y4自身もカラオケ店の駐車場において「このままでは帰すことはできない」旨言ったと認めていることなどからすれば、一連の取立行為は、XやAにおいてそれを拒否すれば解放されないとの心理的強制のもとに行われていたものと推認できる。
(b)結論
これらの事実を総合すれば、Y2~Y4ら3名の本件取立行為は、身体に対する直接的な脅迫や暴行が行われたものではないものの、その態様が社会通念上是認される限度を超え、Xやその同居人等の心身の安全や生活の平穏を脅かすようなものであったと評価できる。
(3)責任の法的構成
Y2~Y4は「不法行為責任」に、Y1は使用者責任に基づき、後記損害額をそれぞれ連帯して賠償する責任を負う。
Y1の「直接の不法行為責任」については、Y1が本件取立行為のような違法な取立行為を一般的な業務として行っていたとまでは認められず、Y1が直接の不法行為責任を負うとは評価できない。
(4)損害額
本件取立行為は、身体に対する直接的な脅迫や暴行がなされたものではないものの、深夜長時間にわたって執拗な要求行為が継続された悪質なものであり、これに加えて、Xがその後も家賃を滞納したことなど諸般の事情を考慮すると、慰謝料20万円、弁護士費用2万円と算定するのが相当である。
国民生活センターHP
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