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2019年4月18日木曜日

賃貸不動産の水漏れ・雨漏りと賃貸人の修繕義務





(注意:2020年4月1日から施行の民法の債権法改正部分には未対応です。)


民法717条1項
「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じさせたときは,その工作物の占有者は,被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし,占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,所有者がその損害を賠償しなければならない。」
(1)
民法717条1項但書により,所有者の土地工作物責任は,無過失責任とされていますので,賃借人が賃貸建物の漏水によって損害を被ったときに,賃貸建物の所有者は,漏水が工作物の設置又は保存に瑕疵を原因とする限りにおいて,第三者の行為(例えば,工事業者の手抜き工事)に起因するとの反論をすることはできません。
(2)
設置の瑕疵とは,土地工作物を設置した時点において生じている欠陥(例えば,新築時から生じている雨漏り)のことをいい,保存の瑕疵とは,土地工作物の設置後の維持管理の過程で生じた欠陥(例えば,老朽化を原因とする漏水)のことをいいます。




賃借人が賃貸人(=所有者)に対して,民法709条の不法行為責任を追及する場合には,賃借人が賃貸人の過失を立証する必要があります。民法709条は過失責任とされているからです。




なお,賃貸建物の所有者は,間接占有者でもありますので,民法717条1項の占有者の責任も負っています。




賃貸人が注文者となって契約したリフォーム工事(請負契約)の工事業者が生じさせた漏水については,民法716条により,原則として賃貸人は損害賠償責任を負いません。工事業者が生じさせた漏水が,土地工作物の保存の瑕疵に該当しない限り,賃貸人は民法717条1項但書の所有者責任も負いません。




(3)
民法606条1項により,賃貸人は賃貸建物の使用収益に必要な修繕をする義務を負っていますので,賃貸人が修繕義務を怠った場合は,賃借人に対して民法415条の債務不履行責任を負います。




賃貸人は自然災害などの不可抗力や第三者の行為によって修繕が必要になった場合であっても,修繕義務を負っています。


ただし,専門業者の調査の結果によっても,雨漏り・漏水の原因が発見できない場合には,賃貸人は修繕義務を負いませんし,


修繕することが物理的に不可能な場合だけでなく,経済的にも不可能(過分の修理費用を要する)場合も,賃貸人は修繕義務を負いません。




現在の民法606条の解釈について,通説によると,たとえ賃借人に帰責事由があっても賃貸人は修繕義務を負うと解されていますが,債権法改正(民法新606条但書)により,賃借人に帰責事由があるときは,賃貸人は修繕義務を負わないという明文の規定が創設されましたので,現在の民法606条の解釈もその影響を受ける可能性があります。


(4)


漏水・雨漏りにより賃貸借契約の目的を達成できない場合は,民法541条により賃借人は賃貸借契約を解除することができます。


なお,賃貸建物への入居当初から漏水・雨漏りが生じている場合は,民法559条により民法570条の売買の瑕疵担保責任の規定が準用されますので,賃借人が瑕疵を知ったときから1年以内又は引渡しを受けた時から10年(又は商行為による場合は5年)以内であれば,賃貸人に瑕疵担保責任を追及することができます。


(5)


お風呂の排水口ヘアーキャッチのような物は,土地工作物に該当しないと解されますので,ヘアーキャッチが目詰まりしたことが原因で生じた漏水による損害について,所有者に対して土地工作物責任を追及することはできません。


(6)


賃貸人が,アパートの一棟全部の所有権を有する場合か,いわゆるマンションの分譲貸し(賃貸人が当該賃貸物件の区分所有権しか有していない。)の場合かによって,賃借人の取り得る選択肢が異なります。


分譲貸しの場合は,漏水箇所が他の区分所有者の部屋の場合や共用部分に該当する場合は,賃貸人には修繕権限がないので,賃貸人が勝手に修繕をすることはできません(区分所有法18条の保存行為(=共用部分の軽微な修繕行為)を除く)。その場合は賃借人は賃貸人に修繕を請求することができません。




賃貸人が建物一棟全部の所有権を有している場合の方が,賃借人の賃貸人に対して要求できる選択肢は広いことになります。賃貸人が単独で建物全部を修繕する権限(義務)があるからです。


(7)


カビの発生について,漏水がカビの発生原因であると主張する賃借人に立証責任がありますので,カビの発生が賃借人の用法遵守義務違反・善管注意義務違反によるものではないこと(例えば,結露に対する日常的な手入れをしていたことなど)も立証する必要があります。


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事務所 札幌市中央区

(石原拓郎司法書士・行政書士・社会保険労務士事務所)のHP
 

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